一般社団法人与信管理協会

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与信管理用語解説

与信管理用語集 さ行(解説)

債権管理(さいけんかんり)

売掛債権、手形債権や貸付債権などの債権の回収、担保や保証の取付けをいいます。債権の保全、取引先の信用状態を定量・定性的にかつ定期的に把握し、取引限度や信用度合を検証して現実の取引リスクの軽減を目的とする与信管理、契約の作成・交渉・締結等予防法務が目的の契約管理、訴訟戦略を主務とする訴訟管理など、企業が行う商取引全般に係わるリスク管理を総称して債権管理といいます。

 

債権・債務(さいけん・さいむ)

「債権」とはある人相手方に金銭や物などを請求し、実行させる権利のことです。一方「債務」とは、債権に対して金銭や物などの給付を義務付けらていることです。

 

債権償却(さいけんしょうきゃく)

倒産した取引先や実質的に経営が破綻している取引先に対する債権について、回収不能額を損失計上することです。事故債権が発生した場合、配当見込み、担保権の実行や保証の履行請求によって、どの程度回収できるのか見極める必要があります。帳簿上の処理方法には、間接償却と直接償却があります。間接償却は、将来回収不能になると見込まれる金額を貸倒引当金に計上することにより、前もって費用化する方法で、引当処理とも言われます。直接償却は、銀行の貸借対照表から不良債権を切り離し、損失計上したうえで消滅させる方法です。

 

債権譲渡禁止(さいけんじょうときんし)

債権譲渡は、債権者と債務者との間で、債務者が第三者に対して有する債権を、債権者に譲渡することをいいます。債権は原則として譲渡性を有しますが、その性質上譲渡が許されない場合や、譲渡禁止の特約がある場合、法律上譲渡が禁止されている場合は、譲渡ができません。尚、債権の譲受人が譲渡禁止特約に対抗できるのは、譲受人に悪意又は重過失がない善意の場合のみであり、譲受人に悪意又は重過失がある場合は、譲受人は譲渡禁止特約に対抗できないため、注意が必要です。

 

債権譲渡登記(さいけんじょうととうき)

平成10年10月に「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」が施行され、民法に基づく対抗要件の具備方法に加え、法務局に備える債権譲渡登記ファイルに登記することにより、債権譲渡の対抗要件が具備できるようになりました。現在においては、インターネットによる電子申請も可能です。

 

債権担保(さいけんたんぽ)

商取引にもとづき発生する債権の担保として売掛金債権などの指名債権を担保とするものです。

 

債権放棄(さいけんほうき)

債権者が、債務者の承諾がなくとも、債務者に対する一方的な意思表示によって債権を無償で消滅させることです。債務免除ともいいます。債権者は、催促を行っていても、回収が不可能であったことを証明しなければ、免除した債権は寄付金(課税対象)とみなされる恐れがあるため、注意が必要です。そのため、債務者への催促は、内容証明郵便で通知し、証拠を残しておくことが望ましいといえます。

 

債権保全(さいけんほぜん)

債務者に対する債権を最終的に現金として確実に回収するために行う様々な方策のことです。具体的には、担保設定や保証取得、債権回収のために必要に応じて行う仮処分・仮差押えなどが挙げられます。

 

在庫買上げ(ざいこかいあげ)

債務者の一時的な資金繰りの便宜の為、債務者所有の原料、製品などの商品を買取り、その代金を現金や手形で支払うことです。一般的に、買戻特約・再売買予約などの条件付で取引がなされ、一定期間後に一括もしくは分割して商品が債務者に戻されます。商品が担保となり、リスクが軽減されるためこのような商取引は少なくありません。同様の行為で、機械設備や不動産などを介したリースバック(一度買上げて代金を払い、同時にリースとして貸渡す)取引があります。

 

債務超過(さいむちょうか)

負債の総額が総資産を上回る状態を指します。つまり、資産をすべて売却しても、負債を返済することができない状態です。貸借対照表(B/S)では、純資産(自己資本)がマイナスになります。

 

財務分析(ざいむぶんせき)

企業が作成する貸借対照表、損益計算書等の財務諸表を利用して、財務面から企業の実態をつかもうとすることです。財務分析は、現在の取引先の実態について、支払能力の変化と将来の予測を行い、貸倒れの発生を予防し、万が一発生した場合でも、その損失の軽減を図ることを目的としています。また、財務分析を行うことにより、新規の優良取引先を開拓することができます。具体的には、その企業の決算書3期分(少なくとも2期分)を並べて変化を分析するとともに、同業他社との比較において分析していきます。

 

債務名義(さいむめいぎ)

強制執行によって実現される請求権の存在及びその範囲、当事者を表示した公の文書のことです。

 

詐害行為(さがいこうい)

強制執行の対象となる債務者の財産(責任財産といいます)を不当に減少させる債務者の行為をいいます。民法では、詐害行為により債務者の責任財産から逸出した財産を債務者の責任財産に取り戻す権利を認めており(詐害行為取消権)、他の債権者による抜け駆け的な債権回収を是正することができます。逆に言えば、特定の債権者が債務者の信用不安が判明した時にいち早く債権回収を行った場合に、他の債権者から詐害行為取消権を理由に回収行為を取り消されるリスクもあるということになり、注意が必要です。

 

先取特権(さきどりとっけん)

物的担保の一つで、法律で定められた特定の債権を有している債権者が他の債権者に優先して債務の弁済を受けることができる権利のことです。例えば、取引先に販売した商品が在庫としてあり、なおかつ商品代金の債権を持っている場合など、その商品に対して先取特権を主張することができます。これは法律上の一定の要件を満たせば当然に発生する法定担保にあたりますが、この権利を主張するには証明できる売買契約書や受領証が必要となります。日頃から証憑類の入手・保管を心がけることが大切です。

 

差押え(さしおさえ)

債務不履行の債務者に対して強制執行の手続を行うために、その目的となる財産を債務者が処分することを禁止することです。

 

三角相殺(さんかくそうさい)

債権保全の方法の一つです。具体的には、債務者と債権者との間に直接、金銭債権と債務の対立が無い、もしくはできない場合、債権者が、債務者に対して買掛金債務などを持っている第三者と調整し、この第三者経由で債務者から商品を購入します。そして、債権者が持っている債務者振り出しの手形を、当該商品の代金支払のために第三者に裏書譲渡し、第三者の債務者に対する債務と当該手形債権を相殺してもらいます。またこの際、第三者の信用力と破産法や会社更生法などによる相殺制限に抵触しないよう事前に準備することなどに注意が必要です。

 

仕入債務(しいれさいむ)

仕入債務(買掛債務)とは、企業が商品やサービスを購入し、未払いとなっている債務です。一定日後に支払われることを約束した金銭債務であり、買掛金や支払手形などがあります。裏書譲渡手形の残高がある場合には、裏書譲渡手形が自社で振出す手形(支払手形)の代わりに、手持手形に裏書きして仕入先に支払われたものである為、仕入債務に含める必要があります。裏書譲渡手形は通常、貸借対照表上では脚注表示となっている為、仕入債務に加算することが必要です。

 

資格証明書(しかくしょうめいしょ)

商業登記簿に登記されている法人の代表者、支配人や代表取締役等の登記事項に変更がないことを証明する法務局の書面です。商業登記における登記事項証明書のことで、法人を当事者とする公正証書の作成や不動産取引(登記)に必要となります。誰でも、所定の手数料を法務局に納付すれば、登記事項証明書の取得をすることができます。

 

資金繰り(しきんぐり)

将来の現金の収入と支出に加え、現金の調達と運用についての計画のことです。資金繰り表を作成することで計画がより明らかになり、勘定科目別の向う半年間における現金の収入と支出(経常収支)や、収入過不足額に対する現金の調達(手形割引・借入金による調達等)、借入金返済等の支出の予想がわかります。
企業は資金がなくなれば倒産します。したがって、資金繰りに支障がないかを財務分析、定性分析などから明らかにしていくことが重要です。取引先の資金繰り予定に不安な点を感じた場合は、詳細な調査を行い、正確な情報を得ることに努めることが必要です。

 

事故(じこ)

貸倒・焦付きなどと同じ意味で使われることが多く、一般には①手形・小切手を不渡りにしたとき②手形交換所の取引停止処分を受けたとき③租税滞納による場合を除き、差押え、仮差押、仮処分、競売等の処分を受けたとき④債権者集会を開催し、内整理を行おうとしたとき⑤破産、民事再生の申立て、会社更生法適用の申請等があったとき等の総称です。

 

資金繰り表(しきんぐりひょう)

一定期間における現金収支を表したもので、その目的は、過去の現金収支の動きから将来における資金の運用と調達を明らかにしていくことにあり、通常は月ごとの月次資金繰り表を作成するのが一般的です。取引先の支払能力を判断するための重要な資料といえ、集中的な管理を要する取引先からは、是非とも入手したい資料です。しかし、資金繰り表は取引先の実態を赤裸々に示すものであるため、関係が親密であったり、取引上の力関係で優位に立っていなければ入手困難な資料でもあります。そのため、日頃から取引先と関係を築くことが重要となります。

 

時効の利益の放棄(じこうのりえきのほうき)

権利を行使しない状態が一定期間続くことによって権利消滅の効果を生ずる時効が消滅時効といいますが、一度消滅時効にかかった債権について債務者が時効の援用をせずに権利の行使に応じることです。債権回収の実務上は、債務者にそれとなく債務の確認をさせたり債務の一部弁済をさせることにより結果として時効の利益の放棄をさせる効果を狙うこともありますが、債権管理上は、時効を中断させ完成しないよう注意しなければなりません。

 

事故債権(じこさいけん)

破綻または倒産した取引先に対する売掛金や貸付金、未収入金などの金銭債権のことです。一般的に、支払不能・支払停止、銀行取引停止等の経営破綻をした場合や、法的倒産手続(破産、特別清算、会社整理、会社更生、民事再生)を申立てた場合がこれに該当します。

 

自己資本比率(じこしほんひりつ)

総資本に占める純資産(自己資本)の多寡で経営の安定性を図る指標で、「自己資本比率(%)=純資産÷総資本×100」の計算式で求めることができます。自己資本比率が10%を下回ると注意が必要で、マイナスの場合(債務超過)は、警戒が必要です。

 

資産(しさん)

将来企業に収益をもたらすことが期待される経済的価値のことで、企業が事業活動を行うために調達した資金がどのように運用されたかを示します。流動資産、固定資産、繰延資産から成っており、貸借対照表(B/S)の左側に記載されます。

 

質権(しちけん)

物的担保の一つで、債権者が債務者または第三者から受け取った目的物を担保として占有し、債務が弁済されない場合は、他の債権者に優先してその目的物の価値から弁済を受けることができる権利のことです。不動産にも設定できますが、宝飾品・美術品などに設定されることが多いです。当事者の契約に基づいて成立する約定担保にあたります。

 

執行手続(しっこうてつづき)

個人・法人が決めた事項、法律に定められた事項、判決などによって執行が許された事項などを具体的かつ現実的に実行することまたは、その手続のことです。狭義には、民事執行法にもとづく強制執行や担保権の実行としての競売および民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売などをいいます。この場合は、不動産に対する執行、動産に対する執行、債権に対する執行によってそれぞれ手続が異なります。

 

実測面積(じっそくめんせき)

土地や建物の境界線や境界点を現地で明らかにし、実際の測量に基づいて算出された面積のことで、登記面積に対する概念です。通常、不動産取引をする場合は、隣接の土地との境界や道路、水路などとの境界を権利者立会いのもとで明確にし、確認された境界点にもとづいて測量を行い、実測面積を確定します。この実測面積を前提として価格が決定されます。実測後に地積更正登記をしない限り、通常は不動産登記簿上の登記面積(公簿面積ともいう)と異なるので不動産の売買をするときは、どちらの面積にもとづいて取引をするのか予め決めておく必要があります。

 

私的整理(してきせいり)

裁判所の監督による法的整理によらずに行う倒産手続のことです。債権者と債務者が債務の弁済方法や事業の継続・廃止等について合意し、事態を処理します。法的整理のように一定の決まった手続があるわけではありません。メリットとしては、債権者と債務者の合意がスムーズであれば法的整理に比べて時間と費用が節約でき、高額な配当が期待できる点や、秘密裏に手続を進めることが可能な点などが挙げられます。一方、デメリットとしては、法的な拘束力がないため、債権者間の平等が図られず不公平な資産の分配が行われる恐れがある点や、債権者全員の合意が必要なため、合意しない債権者がいた場合には手続が成立しにくい点などが挙げられます。

 

私的整理に関するガイドライン(してきせいりにかんするがいどらいん)

私的整理が公正・円滑に行えるよう、手続の客観・明確化を目的として定められたガイドラインのことです。金融界と産業界の代表や学識経験者を委員として組織された「私的整理に関するガイドライン研究会」から2001年に発表されました。法的強制力を持つものではなく、あくまで紳士協定です。

 

自働債権(じどうさいけん)

相殺する者から見て、相手方に対して有する債権のことをいいます。

 

支払サイト(しはらいさいと)

買掛金や請負代金などが、締め日から実際に現金で支払われるまでの猶予期間のことです。多くの場合、日数を単位とし、例えば、「月末締めの翌月末払い」であれば、「30日サイト」といった使い方をされます。

 

支払手形(しはらいてがた)

商品やサービスなどを仕入れた対価として、仕入先に対し振り出す商業手形のことを指します。一定の期間内に手形代金を仕入先に支払うことを約束し、通常の営業取引から生じたものを対象とします。また、通常の営業以外の取引から生じたものについては、「営業外支払手形」や「設備支払手形」などの別の勘定科目で明確に区分しなければなりません。

 

支払督促(しはらいとくそく)

債権者による簡易裁判所への申立てにより、証拠調べや債務者の審尋を要せず、書類の提出のみで簡易迅速に債務名義を取得できる手続きのことです。申立て費用も訴訟提起の半分で済むので、債務者による争いがないケースでは、費用や時間をかけずに債務名義を取得するのに適した手続きといえます。ただし、債務者からは理由の明示なしに異議(督促異議)を申立てることが可能なため、そこから通常訴訟に移行した場合、結果的に通常の訴訟提起よりも多くの時間を費やしてしまうこともあります。債権者としては、債務者が督促異議の申し立てをするかどうかを事前にできる限り予測し、メリット・デメリットをよく勘案したうえで支払督促という手続きを選択するか否かを判断する必要があります。

 

支払利息率(しはらいりそくりつ)

借入金・割引手形など会社が利子をつけて返済しなければならない有利子負債の額の適性さを確認するための指標です。「支払利息・割引料÷総借入×100」で算出されます。借入金額が多くないにも関わらず、支払利息率が高い場合は高利貸しから調達をしている等の懸念があります。高いと判断した場合には、借入金の内容を勘定科目明細書等で確認することが望ましいです。

 

資本(しほん)

事業を営むための元手となるお金です。株式発行などによって調達し返済の必要がない「自己資本」と、第三者から借入などで調達し返済の必要がある「他人資本」に分けることができます。一般的には、全体の資本に対する自己資本の割合が高い企業ほど安定しており、倒産の危険も少ないと考えられます。

 

資本生産性(しほんせいさんせい)

付加価値分析指標の1つで、投下資本に対して、企業が経営活動によって生み出す付加価値をどの程度創造したかをみる指標です。「付加価値額÷総資本」で算出します。

 

借地権価格(しゃくちけんかかく)

借地権(土地所有者から、「建物を所有する」目的の為に土地を借りて使用する権利)を用途地域、存続期間や更新条件そして賃料・保証金・敷金などを前提に評価した価格のことです。該当地の「更地の時価に借地権割合をかけたもの」が借地権価格となります。

 

社内格付(しゃないかくづけ)

取引先の信用力を比較するために、取引先を統一的な基準で評価し、簡潔な記号・数字で表示し分類するものです。与信管理における格付の評価基準は、あくまでも企業の支払能力、つまり倒産の可能性に力点が置かれるべきで、規模や社歴、イメージだけで判断すべきものではありません。社内格付制度は、与信管理ルールの根幹をなすものといえ、売掛債権全体に内在する与信リスクの定量化、個社別の取り組み方針の明確化、与信管理業務の効率化を可能にします。

 

収益性分析(しゅうえきせいぶんせき)

財務分析を行う際の分析方法の1つで、企業がどの程度「儲けているか」を示します。総資本に対する利益率を示す「総資本利益率」や、売上に対する利益率を示す「売上高利益率」、総資本に対する売上高を示す「総資本回転率」、等を用いて同業他社や過去数期の決算内容を比較することで、より精度の高い分析が可能となります。

 

集合債権譲渡担保(しゅうごうさいけんじょうとたんぽ)

債務者が有する、第三債務者に対する複数の特定された個々の債権を、一個の集合した債権として捉え、これに譲渡担保を設定することです。過去に最高裁判例で、判例上認められていますが、実務上は対抗要件の具備、将来債権の譲渡また譲渡禁止特約など、活用されるにあたり課題もあります。

 

集合物譲渡担保(しゅうごうぶつじょうとたんぽ)

特定の倉庫内の鋼材類一切といった一つの纏まった物の集まりを目的物とする譲渡担保を集合物譲渡担保といいます。対抗要件は、目的物の占有改定による引渡しです。担保取得にあたっては、集合物の種類、所在地および量的範囲を特定しなければなりません。そして決められた倉庫に目的物が搬入されると担保になり、搬出されると担保対象から外れることに留意する必要があります。

 

集中管理が必要な与信先(しゅうちゅうかんりがひつようなよしんさき)

取引先における取引シェアが30%を超える先においては、取引撤退時のリスクが高くなることから、重要取引先として位置づけ、常時取引業況を把握する体制を築くなど、コストと手間をかけて管理する必要があります。

 

出荷案内書(しゅっかあんないしょ)

商品などを発送・出荷する際に、商品の明細、数量、単価、合計金額を記入して納入先に通知する書類であり、納品書とも言われます。この出荷案内書だけを信頼して売主に商品代金を支払ってしまうと、後日、商品相違・数量不足・品質不良などが発覚することがあるので、現物を確認しておく必要があります。

 

出荷停止(しゅっかていし)

債権保全の目的などで、取引先に対し契約残となっている商品の出荷を一時的に止めることです。法律上は契約解除が合理的であったかどうかが問題となるため、出荷停止には解除権や不安の抗弁権の主張が必要になります。不安の抗弁権は、相手方の財産状態が明らかに悪化しており、代金の支払いが危ぶまれる場合に、商品の引き渡し拒否について主張できる権利です。また、契約の解除においては、解除権の濫用だとみなされると損害賠償請求をされる可能性もあるので注意が必要です。

 

受働債権(じゅどうさいけん)

相殺する者から見て、相手方がこちらに対して有する債権のことをいいます。

 

純資産(じゅんしさん)

資産総額から負債総額を差し引いた金額を指します。返済の必要がない安定した資金調達であり、返済が必要な負債(他人資本)に対し、自己資本とも呼ばれます。負債とともに貸借対照表(B/S)の右側に記載されます。

 

紹介取引(しょうかいとりひき)

自社の販売先、仕入先等の縁故者や、土地の有力者等から紹介を受けて成立する取引形態のことです。信用のおける人物または企業からの紹介先であっても、紹介者の信用と混同することなく紹介先の信用調査を行い、主体的かつ冷静に取引の是非を判断する必要があります。中には、"紹介の紹介"や、"紹介企業担当者の個人的な縁故関係に基づく紹介"など、紹介者が主体的な立場で紹介していないケースもあり、注意が必要です。

 

少額訴訟(しょうがくそしょう)

請求金額が60万円以下の金額支払請求事件について、簡易裁判所において少ない費用と時間で紛争を解決できる訴訟手続きのことです。少額訴訟では、原則、1回の口頭弁論期日だけで審理を完了するものとされており、直ちに判決の言い渡しがなされます。しかし、被告から通常訴訟に移行する旨の申述があった場合には、通常訴訟に移行するため、債務者の意向次第では、少額訴訟の手続きで解決ができない場合もあり、注意が必要です。また、同一の原告が同一の簡易裁判所において少額訴訟をすることができるのは1年に10回までと、回数制限が課されています。

 

償却(しょうきゃく)

償却とは、企業のもつ資産価値を実体に沿った評価額にする為に、費用勘定で処理していくことを言い、具体的には「不良債権の償却=貸倒償却」や「設備等の減価償却」等の用語として使われ、いずれの場合も損益計算書(P/L)上、費用として計上され、結果、貸借対照表には償却後の資産が表示されることになります。

 

商業登記簿(しょうぎょうとうきぼ)

会社法、商法の規定により、会社、商人に関する一定の事項を記載した帳簿のことであり、法務局で管理されています。いわば企業の戸籍のようなもので、1個の会社、商人ごとに作成されます。商業登記簿謄本は、記載される内容によって、現在事項証明書、履歴事項証明書、閉鎖事項証明書の3種類があります。また、それぞれの証明書には、全部の事項を記載した全部事項証明書と一部の事項のみを記載した一部事項証明書があります。

 

上場会社(じょうじょうがいしゃ)

発行した株式が、証券取引所で売買されている会社のことです。つまり、株式公開をしている会社を上場会社といいます。株式を上場するためには、様々な審査基準を満たす必要があるため、上場会社の数は約4000社と、全株式会社の1%にも満たない数字になっています。証券取引所には、東京証券取引所一部、二部のほか、マザーズやジャスダックのような、新しく起業したばかりの新興企業やベンチャー企業が上場できる証券取引所もあります。

 

譲渡担保(じょうとたんぽ)

物的担保の一つで、債務者に提供させた担保物件(主に動産)の占有と利用を担保提供者に認めながら、その所有権を債権者に移転する形式を取る担保権です。質権と似ていますが、担保物件を担保提供者が引き続き占有・使用できるという点が異なります。法律上の条文に定められているのではなく、判例により認められた担保権です。

 

商品売買基本契約(しょうひんばいばいきほんけいやく)

個別、単発の売買取引でなく、同種類の商品を反復・継続して比較的長期間取引を行う場合に、取引の一般条項や取引全体に共通するルールなどを包括的に取り決めておくのが売買基本契約です。基本契約を締結しておくと、個別の売買契約は、簡素化でき数量・単価・引渡し条件・決済条件などの売買の骨子・骨格のみを決めるだけでよくなります。

 

商品引揚げ(しょうひんひきあげ)

取引先が、信用不安・倒産状態に至った場合に対処する債権保全・回収方法の一つで、相手方のもとにある商品を引き揚げて債権回収を図ることです。商品引揚げは、自社が売った自社商品を引き揚げる場合と取引先が他社から購入した他社商品を引き揚げる場合に分かれます。いずれの場合においても、相手方が倒産の危機に瀕している時期になされるほど、他の債権者を害する行為として取り消されたり(詐害行為取消権)、相手方が倒産した場合は破産管財人から否認権を行使されて商品の返還を求められる可能性が高くなり、注意が必要です。

 

賞与資金(しょうよしきん)

夏(6月頃)と冬(12月頃)、あるいは決算月等の賞与支払月に需要が発生する運転資金のことです。賞与資金の返済は次回の賞与支給時期までに完了することが望ましいため、原則として短期資金での調達となります。
※運転資金についての解説はこちらを参照ください。

 

署名(しょめい)

署名者が自分を表す氏名その他の呼称を自署によって表記したものをいいます。契約書には、契約当事者が署名または記名押印する必要がありますが、実務上、契約当事者が会社の場合は、署名よりも、会社名と代表社名を記名したうえで代表者印を押印するほうが一般的です。

 

所有権移転請求権仮登記(しょゆうけんいてんせいきゅうけんかりとうき)

債権者が、債務者の所有する不動産の所有権移転請求権(売買予約や代物弁済予約など)を保全するために行う仮登記のことです。まだ所有権の移転はないが、将来所有権を移転してもらえることを前提に権利を保全しているものであることから、当該仮登記がなされている物権を担保徴求する場合には、保証否認防止の観点から、登記上の所有者および仮登記設定者のそれぞれに対して、所有権の存在に関する確認を行い、同時に担保提供意思の確認を行うことが必要となります。

 

所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)

物的担保の一つで、売買において、売買代金が完済されるまでは目的物(商品)の所有権を売主にとどめておくことです。契約書の中に所有権留保特約を加えておくと、万が一代金が完済されなければ、売主は商品の所有権を主張して債務の弁済に充当することができます。

 

所要運転資金(経常運転資金)(しょよううんてんしきん(けいじょううんてんしきん))

企業が日々同じピッチで仕入・生産・販売を同じ金額だけ行っていることを前提として、経常的に発生する運転資金のことです。
※運転資金についての解説はこちらを参照ください。

 

(法人)申告所得(しんこくしょとく)

企業は決算期ごとに税務署に法人税確定申告書(税務申告書)を提出し、法人税の対象となる課税所得を申告します。税務申告書に記載する所得金額や税額等は、株主総会の決議により確定した決算に基づいて計算されなければなりません。申告所得は税務署へ申告した金額である為、一般的に信頼度が高く、決算書との比較において申告所得或いは決算内容が妥当か検討するのに非常に役立ちます。但し、申告所得は税務上、一事業年度における益金から損金を引いて算出しますが、損金として認められる限度が定まっている交際費などがある為、所謂決算書上の当期利益とは必ずしも一致するとは限りません。

 

人的担保(じんてきたんぽ)

担保のうち、債務者以外の第三者の信用を対象とした担保のことで、具体的には保証や連帯保証を意味します。

 

信用調査(しんようちょうさ)

企業間の商取引における与信意思決定をサポートするために行う調査のことです。収集した情報を分析し、企業の姿を浮き彫りにすることで、与信意思決定の判断材料とします。

 

信用調査会社(しんようちょうさがいしゃ)

企業の概要や決算内容等を調査する民間の調査会社です。全国展開する大手のほか、ある特定の業界に強い中小の信用調査会社もあります。調査項目としては、企業の全般のほか不動産等の資産関係など特定の項目に絞って依頼することも可能であり、調査結果は、信用調書として報告されます。信用調書の他に、割止め情報等の信用不安情報も提供しています。信用調書は調査対象先からの自己申告を前提にして評価をしていることが多い点を留意しておく必要があります。

 

信用調書(しんようちょうしょ)

ある企業の経営内容について、調査員が直接現地に出向き経営者ヒアリングなどの実地調査を行うほか、登記簿や決算書などの書類により総合的に調査した結果を、10~15頁程度にまとめたものです。自社での信用調査には人員も費用も時間も多くかかり限界がありますが、信用調査会社を利用すると、コストが割安であるうえに客観的な調査結果を入手することができます。また、直接利害が絡む取引先の営業担当者には話さなかったことも第三者である調査員には話す、といったケースもあるため、自社での調査を補完し、裏付けを取るのに有効であるといえます。

 

信用不安情報(しんようふあんじょうほう)

信用調査会社や業界内、あるいは取引先内部や競合他社などから伝わってくる、会社の信用力に関する情報のことです。「不渡りを出したらしい」「融通手形を切り合っているらしい」「決算を粉飾しているらしい」「有能な営業部長が辞めたらしい」「手形が街金に出回って割止めになったらしい」など、さまざまな形となって入ってきます。重要なことはそれらの情報をどう判断するかであり、情報の出所や背景の確認を行うとともに裏付けを取り、それによって取引方針の見直し、取引からの撤退、などの対応策を講じる必要があります。ただし、これらの情報は事実に基づくものもあれば、事実無根の単なる噂のものもあるため、慎重に事態を見極める必要があります。

 

信用不安の抗弁(しんようふあんのこうべん)

買主が信用不安状態に至ったときに、契約の履行を拒みあるいは、契約を解除することができるとする考え方であり、同時履行の抗弁権の一種です。信用不安の抗弁権を行使するには、(1)買主が債務を支払う能力に客観的な疑問があること、(2)不安を解消するように買主に一定の説明を求めたり、担保の要求を行ったにも拘わらず拒絶される、などが要求されています。

 

推薦取引先(すいせんとりひきさき)

税理士とは、関税等を除き、租税に関する税務の代理、税務書類の作成、税務相談などを行う者または資格のことです。税務に関する専門家として、独立した公正な立場で申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る事を使命とします。また、税理士の権利、義務、責任等は、税理士法で定められております。

 

税引前当期利益(ぜいびきまえとうきりえき)

経常利益から、臨時に発生する特別損益(例えば不動産の売却による損益や災害による偶発的損失等)を加減したものです。

 

税務申告書(ぜいむしんこくしょ)

決算書の数値から納税額を計算するために作成する書類であり、会社の場合は、決算時に作成する税務申告書として、法人税申告書、消費税申告書(一定の基準を満たした場合のみ)、都民税・事業税申告書の3つが挙げられます。決算書は会社自身が作るものであり、第三者に保証されるものではありませんが、この税務申告書と組み合わせて分析することで、非公開会社であっても、ある程度の信頼性を見込むことができます。

 

税理士(ぜいりし)

税理士とは、関税等を除き、租税に関する税務の代理、税務書類の作成、税務相談などを行う者または資格のことです。税務に関する専門家として、独立した公正な立場で申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る事を使命とします。また、税理士の権利、義務、責任等は、税理士法で定められております。

 

前期損益修正益・損(ぜんきそんえきしゅうせいえき・そん)

企業会計の特別利益・損失のうち、過年度の経理修正によって生じる利益・損失を表す勘定科目です。一般的に株主総会で承認された決算書は、過去に遡って修正することができないため、特別に本科目を用いて修正します。具体的には、棚卸資産評価の訂正額や減価償却の過不足の修正額等が挙げられ、いずれにしてもその性格上、経常的に処理できない特別な損益であります。

 

船舶・航空機担保(せんぱく・こうくうきたんぽ)

船舶や航空機などを担保目的物とするもので、動産担保の一つです。通常は、船舶や航空機の購入代金を融資し、この貸付金債権を被担保債権として船舶抵当権や航空機抵当権を設定することが多いですが、売掛金債権や手形債権などを船舶・航空機抵当権で担保することも可能となります。船舶の場合に登記できるのは、総トン数が20トン以上の大型船舶が対象になります。不動産抵当権に比べ担保管理が容易ではありませんが、不動産が無くとも価値のある動産を活用することで、必要な資金調達をすることができます。

 

増加運転資金(ぞうかうんてんしきん)

売上高の増減や、回収条件や支払条件の変化等により増加する運転資金のことです。
※運転資金についての解説はこちらを参照ください。

 

相殺(そうさい)

双方が互いに同種の債権を有する場合、両者の債権を対当額だけ差し引いて消滅させることをいいます。取引相手方と互いに債権を有していれば、相手方が倒産しても、相殺によって優先的に自社の債権を回収することができます。相殺による債権回収は双方の債務が弁済期になければ行うことができません。自己の債務については期限の利益を放棄できますが、相手方の債務の弁済期を到来させるためには、期限の利益喪失条項が盛り込まれた契約書を前もって締結しておくことが大切です。

 

総資本(そうしほん)

総資本は、外部の第三者に対して返済義務を負う「負債」と、株主出資による資本金や利益蓄積などの返済不要な「自己資本」を合算したものです。これは、貸借対照表上の貸方勘定科目の合計と等しくなります。

 

総資本回転率(そうしほんかいてんりつ)

企業が事業活動のために投じた資本が、年間に何回転し売上として回収されたかを見る指標で、「総資本回転率(回)=売上高÷総資本」の計算式で求めることができます。回転率が高いほど、少ない資本で多くの売上を上げていることを示しており、効率的に資本が活用されていると判断することができます。

 

総資本利益率(そうしほんりえきりつ)

「総資本利益率(%) = 利益 ÷ 総資本 × 100」で表され、総資本に対する各利益の割合を示しています。会社の総合的な収益性をみる上では、会社が投下した資本に対して利益率の高い企業ほど投資効率がよい企業と言えます。この指標はROA(Return on Assetの略称)と表されることもあります。
損益計算書上の利益には、粗利益(売上総利益)や営業利益、経常利益、税引前利益、当期利益等がありますが、この場合は通常企業本来の実力を示す「経常利益」を使い、過去の決算や同業他社との比較を行うのが一般的です。
また、この算式は売上高を入れることによって次のように、売上高利益率と総資本回転率へ分解することができます。
総資本利益率(%) = (利益/売上高) × (売上高/総資本) = 売上高利益率 × 総資本回転率

 

損益計算書(そんえきけいさんしょ)

企業のある一定期間における経営成績を表す報告書で、Profit and Loss Statement(P/L)ともいい、貸借対照表(B/S)と並ぶ重要な財務諸表です。会社がいくらの事業収益を上げ、その為に必要な費用をいくら使い、その結果いくらの利益を上げたのかを表します。

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